東京地方裁判所 昭和39年(合ね)8号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕(罪となるべき事実)被告人は、昭和三七年三月頃から東京都荒川区町屋二丁目一番一三号土建業大原利平方で、鳶職として働いていたものであるが、些細な理由から同三八年一二月二九日、同人方を辞め、同都浅草山谷界隅の簡易旅館で年末年始を過しているうち、所持金を使い果し、同三九年一月五日朝、同都日暮里の血液銀行で、自己の血液を売り、その代金として金一千円を得たものの、同日昼前から一人で酒を飲んだり、知人と飲食したりして、その日のうちに右金も使つてしまい、他に仕事のあてもなかつたため、再び前記大原利平方に雇つてもらおうと考え、同日夕方頃、同人宅に赴きその旨頼んだが、同人の妻良子から、「主人が旅行中で分らない。」と素気なく断られたので、腹を立て、酒の酔いも醒めやらぬまま、電車の往来に危険を生ずべきことを察知しながら、腹癒せに、同日午後九時四〇分頃、折柄大原方入口附近においてあつた同人方の横約七五糎、縦約四六糎、高さ約七五糎、重さ約四〇瓩のコンクリート製塵芥箱一個ならびに八糎角、長さ一米七〇糎位の角棒一本を運んで同入口前の東京都営電車第二七号系統赤羽より三の輪橋行電車専用軌道北軌条上に載せかけ、もつて、電車の往来に危険を生ぜしめたものである。
(法令の適用)被告人の判示所為は、刑行第一二五条第一項に該当するところ、本件犯行の日時、場所および方法並びに電車の運行状況等から窺われる公共危険の程度という点からみると、被告人の責任は重大であるといわなければならないが、本件犯行の動機、犯意の程度、犯行後の状況および被告人の環境等を斟酌すれば、犯情に憫諒すべきものがあるので、同法第六六条、第七一条、第六八条第三号により酌量減軽をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、同法第二一条を適用して未決拘留日数のうち三〇日を右本刑に算入し、訴訟費用は、被告人が貧困で納付することができないことが明らかであるから、刑事訴訟法第一八一条第一項但書により被告人に対してはこれを負担させないこととする。
よつて、主文のとおり判決する。(真野英一 龍岡資久 太田浩)